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問題の種類:仕訳

問題.1111-1第1問「現金」

問題

 以下の取引を仕訳しなさい。なお、出題文中のカッコ内の文言は、当該解答には「直接」必要ではなく、出題文が終わった後のカッコ内の文言は、相手勘定科目名です。
①(4月1日に、パトカーに乗った警察官3名が会社に来て、以前当社が拾得物として届け出ていた)¥50,000,000の現金が、時効で届け主のものになったと持参した。(雑益)

②(4月2日に、あいうえお銀行の)普通預金に現金¥40,000,000、(同銀行の)当座預金に現金¥10,000,000預け入れた。(普通預金、当座預金)

③(4月6日に、さいたま商店から)商品(A)¥3,300,000を仕入れ、代金は現金で支払った。(仕入)

④(4月10日に、3月分給与支給の際に控除した)源泉所得税¥50,000と住民税¥100,000を現金で納付した。(預り金(源泉所得税)預り金(住民税))

⑤(4月11日、営業のため外出中の社員宛、代引き商品が届いたので、)¥33,000を現金で立て替えた。(立替金)

⑥(4月19日)健康保険料・介護保険料¥208,000、厚生年金保険料¥360,000を現金で納付した。なお、前月分給与から控除した金額が、¥104,000と¥180,000残っている。(預り金(健康保険料)、預り金(厚生年金保険料)、預り金(介護保険料)、法定福利費) 
 

⑦(4月20日、給与支給担当者より、今月分給与支給に関して以下のような報告があった。)
 なお、当社では、預り金を補助勘定を設定して管理している。
 総支給額¥2,000,000
 控除額 健康保険料¥100,000 厚生年金保険料¥180,000 介護保険料¥4,000 雇用保険料¥6,000
     源泉所得税¥50,000 住民税特別徴収¥100,000 立替金¥33,000 
 差引支給額¥1,527,000   (給料、普通預金、預り金(健康保険料)、預り金(厚生年金保険料)、
    預り金(介護保険料)、預り金(源泉所得税)、預り金(住民税))、立替金)

⑧(4月22日、出張中の営業員から、青森商店に対する)売掛金¥220,000を小切手で回収した旨、連絡があった。

⑨(4月25日)小切手¥220,000を(あいうえお銀行の)普通預金に預け入れた。(普通預金)

⑩(4月30日)小口現金に¥79,580を補充した。(小口現金)

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解答

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※解答欄の体裁が良くありません。もっと良くしようと、ホームページ受託企業に交渉しましたが、当該企業の力不足なのか、私の理解能力の不足なのか、現状では以下の体裁が精いっぱいです。いずれ、改善しますから、しばらくの間、我慢してお付き合いください。
第1問解答(転記に必要なので、取引発生月日を記載していますが、本試験時には、省略してください。)
月日 借方   貸方
  勘定科目名 金額   勘定科目名 金額
4/1 現金 50,000,000   雑益 50,000,000
 
月日 借方   貸方
  勘定科目名 金額   勘定科目名 金額
4/1 普通預金 40,000,000   現金 50,000,000
  当座預金 10,000,000      
  
月日 借方   貸方
  勘定科目名 金額   勘定科目名 金額
4/6 仕入 3,300,000   現金 3,300,000

月日 借方   貸方
  勘定科目名 補助勘定科目名 金額   勘定科目名 金額
4/10 預り金 源泉所得税 50,000   現金 150,000
  預り金 住民税 100,000      

月日 借方   貸方
  勘定科目名 金額   勘定科目名 金額
4/11 立替金 33,000   現金 33,000
 
月日 借方   貸方
  勘定科目名 補助勘定科目名 金額   勘定科目名 金額
4/19 預り金 健康保険料 100,000   現金 568,000
  預り金 介護保険料 4,000      
  預り金 厚生年金保険料 180,000      
  法定福利費   284,000
 
   
借方   貸方
勘定科目名 金額   勘定科目名 補助勘定科目名 金額
給料 2,000,000   普通預金   1,527,000
      預り金 健康保険料 100,000
      預り金 厚生年金保険料 180,000
      預り金 介護保険料 4,000
      預り金 雇用保険料 6,000
      預り金 源泉所得税 50,000
      預り金 住民税 100,000
      立替金   33,000

 
月日 借方   貸方
  勘定科目名 金額   勘定科目名 金額
4/22 現金 220,000   売掛金 220,000
 
月日 借方   貸方
  勘定科目名 金額   勘定科目名 金額
4/25 普通預金 220,000   現金 220,000
 
月日 借方   貸方
  勘定科目名 金額   勘定科目名 金額
4/30 小口現金 79,580   現金 79,580


第1問 解説
① 冗談でこの問題を出したのではありません。
私は、日商簿記3級の講師を3年間やり、その間に約200名の受講生に対して講義をしました。その結果、簿記で挫折する方の70%以上が、借方・貸方の区別がつかなくなった方です。
つまり、現金が増加する取引で、現金を借方に書くか、貸方に書くかがわからなくなるのです。
簿記の入り口は、この取引です。
お巡りさんが現金¥50,000,000を持ってきて、あなたの会社の権利です、無償で差し上げます!と言ったら、左側(借方)に「現金」と書きましょう。
左側を「現金」で占領さると、残りは右側(貸方)だけです。
適する勘定科目は、「雑収入」か「雑益」でしょう。この2つの科目名は読めばその内容はお分かりになると思います。
今回「雑益」と指定したのは、臨時・巨額だからです。
蛇足ですが、この場合の消費税は「不課税」です。
ここで解説を終わらせると、従前の解説と同じです。
最近の出題を見ると、「転記」の理解が重要です。分かったつもりでも、決算仕訳等になると、つまづきます。
そこで、転記まで行きましょう。
日商簿記3級では、総勘定元帳に転記する際には、摘要欄に相手勘定科目を記載する、と決められています。(実務では決してそうではありません)
この取引は、単純明快です。
T型勘定の「現金」の借方に「雑益 50,000,000」と記入し、「雑益」の貸方に「現金 50,000,000」と転記します。ただ、「現金」は貸借対照表に属する勘定科目ですから、「前期繰越」があることを忘れないでください。「前期繰越」は20,000,000でした。
「雑益」は損益計算書に属する勘定科目ですから、前期末に残高を「損益」という勘定科目に振り替え、繰越残高は0です。
なお、当社の会計期間は4月1日から翌年の3月31日です。(日商簿記3級は基本的にそうなっています)
参考のために、実務上の総勘定元帳「現金」4月分をエクセルシートに変換・加工したものを添付します。(使用した会計ソフトは「弥生会計」です。
日商簿記3級で学習する「現金出納帳」のイメージに似ています。
 
②皆さんは①で、現金が増加する取引の場合の仕訳は、現金を借方に、ということを学習しました。この問題は、それとは逆に現金が減少します。
そこで、まず貸方に現金勘定を記入します。
残りは、借方だけです。借方は2つの勘定科目です。
転記をイメージしてください。現金勘定の貸方(右側)の摘要欄に相手勘定科目、この場合は2つの勘定科目がありますので、「諸口」、と記入し、金額欄には50,000,000と記入します。
総勘定元帳の現金欄のこの記述だけでは、50,000,000円もの大金がどうしたの?と疑問に思います。
相手勘定が「諸口」ですから。
現在の日商簿記3級における約束事、「摘要欄には相手勘定科目名を記載する」を守ると、こういうことも起こります。
現実の出題でも、これに似たことが行われていますから、皆さんはこれに慣れてください。
本題に戻り、なぜ、この場合に普通預金と当座預金が借方なのかは、貸方が「現金」勘定で満席になったから仕方なく、と理解してくださっても結構です。
もちろん、資産が増加したから借方に、と理解なさっている方はその方がベターです。
続いて、「転記」をイメージしてください。
総勘定元帳「普通預金」の借方に、4/1「現金」40,000,000と、同じく総勘定元帳「当座預金」の借方に、4/1「現金」10,000,000と記入します。
この仕訳における借方の勘定科目の相手勘定科目はいずれも「現金」です。
ここで、「諸口」を使用すると誤りです。
最後に、イメージすべきことが他にはないか考えてみましょう。
実務上は、現金¥50,000,00を安全に銀行まで届けるのは大変です。
その他には、簿記上でイメージすることはありません。
ただ、日商簿記3級には、「現金出納帳」という補助簿(補助勘定元帳)が存在します。その場合には、「現金出納帳」にも記帳する必要があります。
補助簿(補助勘定元帳)に関しては、別の機会に説明します。
 
③この取引は、仕入れた代金をその場で現金で支払った、というものです。
実務上では皆無ですが、「現金」勘定に慣れていただくため、この仕入だけを現金支払いにしました。
この仕訳の問題点は、「仕入」勘定が借方・貸方のどちらに来るのかです。
すでに学習したように、現金が減少する場合には「現金」を貸方に記入します。
そこで、まず貸方 現金3,300,000と記入します。
残りは借方だけです。そこで借方 仕入3,300,000と記入します。
これで、出題に対する解答は終わりです。
しかし、実務経験のない方は、これだけでは、凝った出題に対応することが出来ません。
まず、転記をイメージしてください。
次に、この取引に関して、総勘定元帳以外のどの帳簿に記載するか考えましょう。
仕入れたので、「仕入帳」には記載します。ただし、掛けで仕入れていないので、買掛金元帳には記入なし、です。
「商品有高帳」には記入します。
現金の異動があったので、「現金出納帳」を別途使用している場合にはそれにも記入が必要です。(実務上は決して2つを同時並行では使いません)
 
④給料支給時に控除した、税金等を納付する取引に関する出題です。
今回は、源泉所得税と、住民税の納付です。
「現金で納付」と出題されていますから、現金が減少します。
現金が減少する取引の仕訳は、現金勘定の貸方に現金と記入します。
必然的に、借方は預り金です。なお、当講義では、預り金の補助勘定科目を作成し、利用しています。
日商簿記3級の出題では、「源泉税預り金」とか、「社会保険料預り金」等の勘定科目で選択するよう指示されますが、必ず適切なものがあります。
実務上、この預り金(源泉所得税)と、預り金(住民税)の金額は、給与計算担当者が計算します。(経理担当者と異なる場合が多い)。詳細は4/20給与支給に係わる仕訳時に解説します。
 
⑤実務上よく起こる取引です。
現金が減少する取引ですから、貸方が現金、借方が立替金、です。
 
⑥いわゆる「社会保険料」の納付に関する問題です。
出題文の通り、社会保険料は、社員等と企業が大体折半で負担します。
そこで、納付する際には、企業が負担すべき金額を「法定福利費」という勘定科目で記入します。
現金が減少する取引です。貸方が「現金」。その他の勘定科目は全部借方です。
蛇足?1.社会保険料は、給与計算担当者が、健康保険組合、日本年金機構、労働局等に社員等の給与額を、個人別に届け出ます。その届けられた金額に基づき、先方からいつまでに合計いくらの金額を納付しなさいという「納付書」が企業宛に送付されます。経理担当者はその納付書の金額を期日までに納付し、その際、記載された金額から預り金の残高を差し引き、足りない金額を「法定福利費」として処理(仕訳)します。
蛇足?2.「オンライン化」。各納付に関してオンライン化がどの程度進んでいるのか、私の尊敬する税理士の方に問い合わせたところ、源泉所得税と住民税は、ほぼ全面的にオンライン化をすることが可能ですが、各種保険の納付はいまだに、「納付書」を金融機関に持ち込み、納付しているそうです。
蛇足?3「法定福利費」。日商簿記3級に、この「法定福利費」が出題されると私が4年前の6月の試験の時に予想しました。その時の出題担当者は、給与の実務に詳しくなかったようで(「手取り額」などという文言を使っていましたから)、出題されませんでした。日商簿記3級にもようやく法定福利費の考えが登場して、今昔の感があります。
 
⑦給与の支給
控除が一切なかった場合の仕訳は
借方 給与 2,000,000 貸方 現金 2,000,000 です。
ただ、社員から社会保険料の個人負担分や、源泉控除されて支払うべき所得税(これを源泉所得税と呼びます)や、昨年度の所得対する住民税の「特別徴収」分や、会社が立て替えた金額等が控除されます。
「だから」この控除分は現金の代わりに現金と同じく貸方に記入されます。
(負債の増加または資産の減少だから貸方に記入、と理解なさっている方はそのままでオーケーです)
実務上、給与計算は総務部の給与計算係が行い、金融機関から各社員宛の振り込みまで、すべて総務部で行います。
経理担当者は、総務部から届いた計算書に基づき、粛々と仕訳をするだけです。
給料支給に関する仕訳は、当面、借方は「給料」だけ、あとは全部貸方、と記憶して大丈夫でしょう。
ただ、実務上は、借方に次の勘定科目が多く用いられているので、一応記憶しておいてください。
役員報酬(取締役に対する報酬):所得税と労働保険との関係で区別します。
給料手当
雑給(パート、アルバイトの方に対する給料):社会保険の関係で区別します。
旅費交通費(従業員等に対する通勤費):所得税、住民税の関係で区別します
蛇足?1.通勤費は、所得税と住民税の計算からは除外されますが、社会保険料の計算には含まれます。そこで、給料の額が同じでも、通勤費が月額100,000円の方と、通勤費がゼロの方の社会保険料の合計額は、月額約15,000円違います。
 
⑧他人振出の小切手は、「現金」勘定で処理、ということと、確定日付に関する問題です。前者は皆さんご存知でしょう。後者の、売掛金が決済されたのはいつか?に関して、領収証に記載した日付、と処理してください。
この営業担当の社員が出張から帰り、出社するのは4/24です。それまでは当該小切手は手元にありませんが、仕訳の日付は4/22とします。
このような出題がなされることはないと思われますが、実務上重要ですから、記憶しておいてください。
 
⑨特記すべきことはありません。②で学習したこととほぼ同じです。札束が小切手に変わっただけです。
 
⑩小口現金の処理に関しては、別の回で解説します。

※総勘定元帳への転記に関しては、エクセルシートで、転記前と転記後の両方を添付しています。
転記前のシートに記入なさり、転記後の正解と紹介するようにしています。ご活用ください。